鈴木海渡 浜松医科大学[医学部]


梅田先生は、「きっかけ」でした。いうならば、私の人生の分岐点です。
出会わなかった場合の世界線は大きく異なるものでしょう。

第一印象は「この人おかしい。」


滑り止めで受けた中高一貫校に在籍していた中学3年生の私は、小学生の頃からの目標であった医学部合格に向けてそれなりに勉強していました。
成績は校内では悪くはないものの、医学部を目指すには心許ないものでした。
学校の定期テストで上位の成績を維持し「特進クラス」に在籍し続ける、そして医学部に合格する。
そのための勉強の意味を疑うことはありませんでしたし、小学校の頃から受験勉強をしていた自分にとって勉強は「自明」に意味がありやらなければならないものでした。
また、率直な物言いのために、幼い頃から周りに敵を作りやすい性格で、中学生の頃は敵を作らない振舞いを真剣に検討し、実践しようとしていました。

授業を受けた理由

高校1年になろうという春、3年間ですっかり苦手科目になってしまった英語をどうにかしようと塾の体験授業を回りました。
英語を売りにしている塾の体験授業を受け、半ば心を決めかけていたところで、先生に出会いました。
第一印象は「この人おかしい。」第二印象は「この人の話を聞きたい。」その場で入塾を決めました。
先生の授業の要素は大きく2つです。
まずは「英語」という要素。
最初に大量の英単語を叩き込まれました
週200単語のペースでした。
所属高校に劣等感を感じていた私は、せめてここで後れを取るわけにはいかないという想いから毎週必死に覚えました。
そして梅田式英語の特徴であるともいえる文章の読み方についての指南です。
そもそもなぜ受験に英語が必要なのか、出題者は何を求めているのかという点を徹底的に分析した上で組み上げられた構文解析法は、英文を文の寄せ集めとしてではなく、ひとつの一貫した文章として読むために必要不可欠なものでした。
次に「人生観」という要素です。
この要素は他の先生の授業ではまず含まれることのないものであり、梅田先生の授業を選ぶ生徒の多くが魅かれる点でもあると考えています。
先生と接している中で、私は幾度となく「なんでいま君はここにいるの?どうしてここで勉強しているの?」「どうして医師になりたいの?」という問いを投げかけられました。
他にいくらでも選択肢はある、何をやっても良い。
その中でなぜ自分はその結論に辿り着いたのか。
その選択は自由意志によるものなのか。
その価値基準は他者のものではないのか。
自分の価値観に直結するこれらの質問に当初の私は明確な答えを持ち合わせていませんでした。
塾の先生なのに、「君は本当に勉強する必要があるのか」と問う梅田先生は、私に初めて勉強の意味を真剣に考える機会を与えてくれました。
近代教育の仕組みでは与えられたことを疑わずに達成することが求められますから、幼少期から時間をかけて行われてきたそういった「洗脳」から抜け出す機会を得られたのは非常に幸運でした。

授業を受けての変化


成績の変化は英単語詰め込みの時点で出ました。
単語さえ分かれば高校1年生程度の英語の問題はなんとかなってしまうことが多いのです。
スタートダッシュを決められた単語力は受験の時までアドバンテージとなりました。
そして、構文解析法が身に付いてからは、英語が安定した得点源になりました。
中学を通して足を引っ張り続けてきた英語が常に他教科より良い成績をキープするようになったのには自分でも本当に驚きました。
また、英文を文章として読めるようになったことで、英語がただ問題を解くだけのものではなくなりました。
文章から筆者の意図を考えられることで、英文読解が読書のような意味合いを持つようになったのです。
人生観という点でも大きく変化がありました。
日常的に価値観を問われる中で、私は常に自問するようになりました。
このことで自分が医師を目指す理由、自分が勉強する理由を明確に持つことができました。
どんな努力も目的が明確でなければ続けることは困難です。
私が受験勉強という長期間の戦いを乗り越えられたのは、自分の意思を確かに認識できていたからだと思います。
そしてこのことこそが私に医学部合格を勝ち取らせてくれました。
というのも、私はいまの大学に後期日程の試験で入学しており、その内容は小論文と面接です。
日頃から内省を繰り返していた私は、面接の質問への回答に困ることはありませんでした。
得点開示の結果から計算しても、面接点が救ってくれたのは間違いありません。

医学生として

大学生になってからもこの経験は活きています。
高校ではあまりないグループディスカッション型の授業も梅田先生の授業を受けていた私にはむしろやりやすいくらいです。
自分の価値観を持てているので意見にも自信が持てます。
課外活動なども自分の判断基準で選択できます。
大学生、特に医学生の生活は高校の延長になりがちです。
授業を受けて部活をして、テストに向けて勉強する。
「洗脳」の下ではこれが正しい生活です。
相手にとって都合の「いい子」を目指さない。
自分の選択肢を常に意識し、自分の意思を意識し、行動に繋げる。
今の私の生き方の軸です。